みなさんこんにちは。少々息切れがしてきたかとご心配されている方もいらっしゃるのでは…。でも大丈夫。書きたいことは沢山あるのです。心配なのは、むしろ私の記憶力。これから行かれるかもしれない方のために金額、所要時間等もいろいろ入れようと思っていたのですが、そういうことにはとんと記憶力のない私。時間が経つほどおぼえているのは感動したことばかり。と、いうわけで牛歩旅行記はまだ始まったばかり。お天気が思わしくないので一行はお山に行く前に首都ベルンを彷徨っています。まだこの時点では、雨は降り出しておりません。さて…、


*** アルプスは今日もお天気 ***

第8話 ベルンて言えば、そりゃあもう、熊公園に行かなきゃ、でしょ?



 ベルンと言えばスイスの首都なのである。首都と聞いて「東京」のようなとりあえず何でも吸収してかき混ぜたようなスクランブルな都市を想像してはいけない。そうだなぁ、「京都」で今でも政治を行っていると考えれば少しは近いのかな。

 ベルンと言えば「ユネスコの世界文化遺産」指定の旧市街なのである。現役首都の駅前ど真ん中に「世界文化遺産」があるのだ。しかもなんの違和感もなく、商店街として機能しているのだ。これって結構すごいと思うのだ。

 それでもって、ベルンの街は、結構観光客でごった返していた。
 その時の私たちの服装といえば、荷物を極力減らしたい個人旅行に、予定では山に行くはずでまともな服装の入ったスーツケースを先送りしてしまったこともあって、あまり誉められた格好はしていなかった。もちろんニッカーボッカーははいていない。襟付きのシャツに色・素材からジーパンらしからぬ街着ジーパン、ちょいと底が厚いがカラフルなスニーカーに見えないだろうかと冷や汗の足もと。街歩き達人の方々からは不合格の通知を頂きそうだ。
 とはいえ、言い訳するわけではないが、そんなに浮いてはいなかった。たまたまなのか、欧米人観光客の皆さんは、結構、ヤッケ系の上着にディパック姿だった。遠足なのか小中学生が集団で歩いていたりするので、なおさら目立たなかったかもしれない。ちょっと安心した。
 まあ、この格好で高級レストランに入るようなことはしないので許して欲しい。

 街角で市が立っている。びっくりするような大きさの瓜?や、細長いスイカが売っている。
 ラウベンの中のお店もいつの間にか高級品や衣料品のお店から、絵はがきなんかを売っているお土産物屋にかわっている。
 私は、というと、母に「なんでベルンというかというと、ベルンって熊って言う意味なんですけどね、ほら、あの旗が熊のマークでしょ、ツァーリンゲン公が最初にしとめた獲物がね、熊だったんで…」などと図々しくもいいがけんなうんちくを並べ立てていたりする。しとめたのは公の家来だったか?やっぱり記憶がいい加減だ。

ベルンの街角でたっていた市 原色が溢れていて見ているだけで楽しい


「そろそろ駅に引き返すか」とダンナが言った。
「え?」と私。目の前で旧市街がとぎれて、橋が見えている。U字型にカーブしているアーレ川に架かっているニーデック橋だ。その向こうは熊公園である。引き返す? 何言ってんの? ベルンて言えば、そりゃあもう、熊公園に行かなきゃ、でしょ? 違う?
「熊公園? 何それ?」
「だぁかぁら〜」 ベルンと言えば熊なの。
母も言った。「ベルンというのは熊っていう意味で〜」 そうそうその通り。

 そこで橋を渡って熊公園に行った。でも小熊の季節には早いからか、去年の冬に小熊だったとおぼしき熊が一匹いるだけだった。それでも辺りの子供たちはおおはしゃぎで熊の気を引こうと手を振ったり一所懸命だ。
 ダンナは、「つまんにゃ〜い」と言う。う〜ん、でもね、ベルンと言えば熊公園だから、一応、これだけは見とかないとね。お約束だから。

 さて、それでは引き返すとするか、と、振り返る。
 そこで2度目の衝撃。
 ベルンはトランプのカードのように裏表があるぞと、思ってはいたけれど、2次元ではなく立体だったとは。
 ニーデック橋の上から振り返って見るベルンの市街は、それはそれは美しく、そりゃもう、絵画でも見るようだった。碧のアーレ川の辺にセピア色の旧い家々が立ち並びそれを上から見下ろしているのだ。教会の尖塔も見える。重く垂れ込めた空の色とも不思議とマッチする光景だった。

 これからベルンに行く人には、ぜひ熊公園まで行って、後ろを振り返ってみることをお奨めする。案外、まだベルンに行ったことのない人って…いるでしょ?

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