みなさん、こんにちは。遅々として進まないアル天です。チューリヒに着いて、一晩がたちましたが、あいかわらずお天気が悪いようです。そこで予定を変更してベルン観光をすることにしたのですが…。


*** アルプスは今日もお天気 ***

第6話 幻のインターシティ



 さて、なにはともあれ、首都ベルンに向かうこととなった。まずはチューリヒの駅でインターラーケン・オストまでの切符を買い、ホームへ向かう。…ところが、ホームの右に停車している列車も、左に停車している列車も、同じくベルン行きのインターシティなのである。
 正確に言うと右の列車は9:03発のIC736号であり、ちゃんとトーマスクックの時刻表にも載っている。ベルン行きではなくてベルン経由のジュネーブ行きかなんかだ。
 左の列車が謎である。チューリヒHB発のノンストップ・ベルン行きなのだが、時刻表には載っていない。右の列車の1分前である9:02発だ。
 とりあえず我々は、時刻表よりも駅の行き先案内表示を信用することにして、先に出る幻のベルン行きインターシティに乗り込んだのだ。

 昨日チューリヒに着いたときは夕方だったから、お仕事帰りの人が多かったが、今日は観光客が多い。老若男女、カラフルなヤッケ姿でディパックやバックパックを背負っている。お国も様々なようだが、共通しているのは、みんな嬉しそうな顔をしていることだ。日本人らしい姿は見ない。

チューリヒ中央駅の雑踏


 わくわくしながら列車に乗り込んで待っていると、結構みんな、幻の列車ではなく、隣のインターシティに乗り込んでいく。やっぱりこの列車は怪しいのか? それともあの人達はベルンではなくローザンヌやジュネーブに行く人たちなのか? そこのところはわからない。が、こっちのインターシティは本当にがらがらだ。一つの車両に、2組程度しか客がいない。こんなんで採算が合うのかな…と思っていると、やがてするすると列車は発車した。

 車窓の景色はイメージしているスイスとはかなり違っていた。小さな町や小さな工場地帯のようなものが間に緑の丘を挟んで途切れてはあらわれる。小さな町は可愛らしいというよりも、どこか根本的に貧しさを感じさせる。「観光が唯一の資源」、「美しいが故に貧しい国」というフレーズを思い出させる景色である。
 あっ、「Hero」の看板をつけた工場がある。あのロゴは今朝ホテルで食べたジャムについていたマークではないか。あそこでジャムを作っているのかな?

 などと考えているうちに、検札がまわってきた。スイスの鉄道は日本とは違って、駅に入る際に改札は無い。そのかわり、必ず車掌さんがまわってきて検札をする。 「インターラーケン・オストまで行くの?、じゃあベルンで乗り換えだね」と、車掌さん。と、いうことはこの幻ICはちゃんとベルンに行くのだな。
 しかし、ダンナがベルンに何時に到着するのかと聞いたところ…。
 やられた〜っ! なんと隣の列車より1分早く出発したにも関わらず、到着時刻は10分ほども遅いのであった。そうか、それでみんなあっちに乗っていたのか。

 でも別に急ぐ必要はない旅だ。ま、いいか、なのである。追い越される様子もないところを見ると、隣のICはまったく違う路線を走ってベルンへ向かっているものとみえる。それにしてもこの列車の存在意義はなんだろう。隣のIC736号にしたって、席には結構余裕があった。臨時列車として増発するほどでもないようだ。途中にどこかに停まるならわかるけど、どちらもベルンまでノンストップだ。私たちは、なんだか貸し切り車両みたいで得したような気がするけれど…。

 やがて窓の外が急に街らしくなり、列車は大きな駅に滑り込んだ。終点、ベルンに到着したのだ。

 鉄道に詳しい方々から見ると、そんなのは良くあることだよとか、その列車はちゃんと時刻表にも載っているよ、とおっしゃるかもしれませんが、その時私たちはとっても不思議で、しかもおかしかったので忘れられない出来事となりました。
 次回はいよいよベルン編突入??です。

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