Jungfrau page 2

「女王陛下の007」で有名な、シルトホルン展望台へ向かいます。
相変わらず谷間は雲の中。果たして山々はその姿をあらわしてくれるのでしょうか。


 昨日より雲が薄い。
 どんよりした谷間から、見上げる天は、まだ遙かに遠く…。

 谷底のラウターブルンネンを出発したケーブルカーは、徐々に高度を上げ、切り立つ岩壁をよじ登っていく。この上に待つものは、白い闇か、青く果てしない空間か?
 祈るような気持ち…晴れていてほしい。

 ケーブルカーに鉄道を乗り継いで、霧の中にあらわれたのは、可愛らしいミューレンの村。
 ちりんちりんと鈴の音。霧が深く近づくまで正体が分からない。ああ、羊の群れが寄ってくる。草を差し出すと大人しく食べた。


 ここからさらにロープウェイに乗り換える。


 ロープウェイはぐぐっと登りだした。
 三山が見えるはずの向きの端に立って、祈るような気持ちで外を見ていた。窓は傷だらけだ。スキー板があたるのだろう。

 やがて真っ白だったあたりがぼんやりと明るくなってきた。青空が近いのだ。
 ロープウェイはぐんぐんと登り、あたりはみるみるまぶしさを増してきた。
 どきどきしながら心の中でカウントダウンする。

 3、2、1、ゼロ。

 ロープウェイはすばらしい速度で雲を突き抜け、突然視界は真っ青に染まった。やったぁ、雲を抜けたぞ!! 狙いあやまたず逆光のアイガー、メンヒ、ユングフラウはぎらぎらと真正面にそびえていた。雲一つない正真正銘の晴天だ。
 雲を抜けた瞬間、ロープウェイ内はどよめいた。それほど突然で衝撃的だった。「陽気なイタリアン」達ときたら、足を踏みならして踊り始めた。ロープウェイが揺れる揺れる。とっても楽しい道行きだった。


 中間駅ビルクで最後の乗り換え。
 シルトホルン頂上は、もうすぐそこに見えている。

回転展望台のあるシルトホルンへ続きます。
シルトホルンからの360度のパノラマ公開予定(近日更新)

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