ポートダグラス楽園日誌2004-8

8.ケアンズ・ショー・ディ


 八日目 7月21日(水)


 明日は帰国日。今日が最後の自由日だ。
 朝からよく晴れていた。
 ここでの滞在が最後だと思うと、なんだか遣り残したことがたくさんあるような気がしてきた。

 パンとゆで卵で朝食をとり、車に乗り込んですでに走りなれたキャプテンクックハイウェイをケアンズへ。
 雲ひとつないドライブ日和。
 朝のダブルアイランド、朝のエリスビーチ。
 ケアンズの町外れに入ると、右手にシーフード・マーケットが見えた。
 去年もポートダグラスに滞在して、港なのだから新鮮なシーフードをどこかで仕入れてヴィラで食べようと思ったものの、スーパーにはあまり良い魚介類を売っておらず、結局自炊は肉ばかりになってしまった。
 今年はきっとシーフード専門店を探して食べようと、出発前からいろいろ調べていたが、なんだかタイミングが合わずついにポートダグラスのシーフード・マーケットには行かれなかった。
 ケアンズのここにあるなら、今日の帰りに寄るのもいいかもしれない。

 キャプテンクックハイウェイは、ケアンズに入るとシェリダン・ストリートと名を変える。
 バックパッカーホテルの入り口にそびえる巨大なキャプテンクック像を過ぎて、一昨日、ミコマスケイ・クルーズのときに曲がった高校のグラウンド横を過ぎて、一号線が直角に曲がる道筋に沿って右へ曲がると、広い通りはやがてケアンズのショウグラウンドに着くはずだ。

 ここでは今日から三日間、ケアンズショーという大掛かりなイベントが行われているはずだ。
 だが、行けども行けどもそれらしいものが見つからない。
 垂れ幕も、ポスターも、看板も、日本の感覚で行くと、お祭りが行われているような様子が全くないのだ。
 いったいどこにショウグラウンドはあるのだろう。

 このあたりかなと思って左手を見ると、なにやら仮設のチケットブースのようなものがあり人が並んでいる。塀の向こうにバービーの看板も見えた。
 あれかな?
 でも駐車場が判らない。
 仕方ないのでさらに先へ進み、左折してみた。地図ではもうショウグラウンドは過ぎているはずだ。どこかでさらに左折して、グラウンドの入り口を探してみることにしよう。

 しばらく行くと、道を半分塞いで誘導員が立っていた。
 ここが駐車場らしい。見上げると左手の柵の向こうに、ジェットコースターや観覧車が見えた。間違いないようだ。

 2004年のケアンズ・ショーは100周年の記念イベント。
 内容は、移動遊園地、馬術大会、地元の作品展、商品展示会、出店、見せ物、畜産品評会などなど。
 大人も子供も楽しめる内容になっている。
 入場料は大人14ドル、学生8.5ドル、お子さま5.5ドル、家族割引(大人二人、子供二人)で33ドルだ。

 マリーバのロデオ大会同様、朝の10時過ぎでもまだ半分準備中。遊園地のライドは1/3も動いていない。
 ライドと言えば、そのいくつかはマリーバで見かけたそのものだ。イベントごとにトレーラーに乗せて移動してくるので、先日も見たばかりのお化け屋敷や絶叫コースターがここにもある。ケアンズ・ショーの後は、月末にモスマンでモスマン・ショーがあるので、またこのうちいくつかはモスマンに運ばれるのだろう。

 ただマリーバのロデオ大会とは規模が違う。
 立派なジェットコースターがあるし、観覧車も複数ある。ぬいぐるみの当たるゲームコーナーなど、行けども行けども尽きないくらいあるし、パステルカラーのコットンキャンディー(綿菓子)やジュースを売る屋台も次から次へと。
 幼児向けの乗り物には、絶対著作権違反と見られるディズニーや日本のアニメのキャラクター画が描かれ、どの乗り物も朝はまだ暇そうだ。

 トイレを捜して、体育館のような展示場に入ってみた。
 日本でいうと、幕張メッセをとっても小さくしたような雰囲気だ。
 地元の企業などがPRを行っている。カナとレナはここでヘリウム風船をもらった。

 出入り口の側でDairy Farmersが苺に生クリームをかけたものを売っていた。
 オーストラリアに旅行に来れば、いつもDairy Farmersにはお世話になる。牛乳、ヨーグルトなど、乳製品をスーパーで買おうと思えば、ここの製品が一番目に付くような気がする。
 これをひとつ買って食べた。
 生クリームが美味しいのに、子供たちは苺ばかりほしがった。

 メインアリーナでは馬術大会が行われていた。
 マリーバのロデオはアメリカンな砕けた雰囲気だったが、こちらは英国正当派と行った感じ。折り目正しい騎手たちが、背筋を伸ばして馬を駆っている。

 カナとレナが夢中になったのは羊の毛刈りショーだ。
 人が集まっていたのでなんだろうと柵の中をのぞけば、ちょうどショーが始まるところだった。
 毛を刈る人とアシスタントの他に、もう一人左端に白ひげのおじいさんがいる。
 三人ともカウボーイハットにカントリー風のシャツを着ていて、特におじいさんは手にアコーディオンを持っている。
 何をするのだろうと思ったら、毛刈りのスタートと同時にアコーディオンを奏でながらカントリーソングを歌い始めた。なんとこのショー、生演奏つきだったのだ。
 羊は薬でも効いているのかと思うほど大人しく、なされるがままになっている。
 お腹を刈られて、背中を刈られて、頭や手足の細かいところを刈られて、あっという間に丸裸だ。
 カナは「羊は痛くないの?」と心配そう。
 あなたが美容院で髪の毛を切ってもらうようなものよ、と答えておく。
 最後に別人のようにすっきりしてしまった羊の背に乗って、刈ったおじさんが退場して終わりだ。
 アシスタントの人が刈り取られた毛を拾って、見物していた子供たちに分けてくれた。
 カナもレナもふわふわの羊毛を一房もらい、大喜びだった。

 毛刈りショーの隣では、スネークショーをやっていた。
 どんなショーなのだろうと見ていたがなかなか始まらない。さんざん長い前振りをしたあげく、一人2ドル払わないと見せないと言い出した。
 けちだなぁ。次へ行こう。



 真っ青な空。
 カラフルなライド。
 人出もだんだん増えてきて、お祭りらしい賑わいが感じられる。
 乗り物に乗って良いよとパパに言われ、カナとレナが最初に選んだのはノアの箱船と書かれた迷路系の遊具だった。全体が空気を入れて膨らませるシートでできていて、階段や大きな滑り台がついている。
 中に入れるのはお子さまだけなので、カナとレナが貸し切り状態で遊んでいる間、外で見ていた。
 カナは面倒見が良いので、レナがついて行かれないときはちゃんと戻って手を引いてあげている。
 何でも通路の一部に水がたまっているそうで、レナはそこを通るのが嫌だったと後で言った。

 ノアの箱船の斜め前に腰にロープをつけるタイプのトランポリンがあった。逆バンジージャンプと呼ばれるのはこのタイプだろうか。
 カナ、やってみる?
 彼女は恐がりなので絶対に嫌と言うかと思ったら、意外にもやってみたいと返事が返ってきた。
 子供みたいな顔をした係りのお兄さんが、腰にベルトを巻いてくれる。
 トランポリンは一本のポールの四隅にそれぞれ置かれていて、カナの前から二人の少女が、また、カナの直後からもう一人の少女がやはり腰にベルトを巻いてジャンプしていた。
 最初からジャンプしている女の子の一人は、威勢良く何度も宙返りを繰り返す。
 カナにもくるりと回ってみてよと即したが、そこまでの勇気は無いらしく、どうしてもやってくれなかった。

 逆バンジーの代わりにレナが選んだのはコーヒーカップだった。
 本当にちっちゃなカップで、6つぐらいぐるぐる回っているだけだ。
 乗り口を押さえるのはロープ一本。カップ自体を回転させる中央のバーはなく、なんと係員が前を通過するたびに手をあてて回すという半分手動式だ。
 それでも貸切で乗れてレナは嬉しそうな顔。

 そのあとカナとレナが気になったのは、幼児向けの小さなライドが集まっている一角の、魔法の絨毯だった。
 中央の柱から腕状のバーで繋がった四人乗りのライドがいくつかあり、ゆっくり回ったり上下したりするもの。東京ディズニーランドのダンボをごく小さくしたみたいな乗り物。
 アラジンのジーニーそっくりの人形が後ろについているから乗りたいらしい。
 でもどうみても、これって偽物だよ。
 こんな小さい子向けの乗り物、面白くも何ともないと思うよ。
 それでも子供たちは聞かない。
 まあ、どうしても乗りたいって言うなら、いいけどさ、絶対他の乗り物に乗った方が面白いと思うよ。



 ジーニーもどきのお子さまライドに乗せた後、子供たちにはランチの約束をさせた。
 絨毯に乗る代わりに、ちゃんとお昼ご飯を食べるんだよ。

 パパがさっき目を付けていたのは、リブロースの照り焼き。
 オージー風というよりアメリカンカントリー風。西部開拓劇に出てきそうな干し草の椅子をしつらえた、屋外の店だ。
 ここでリブとポテトを食べた。とっても美味しかった。
 子供たちがほしがったオレンジジュースはこの店にはなく、パパが探しに行った。
 買ってきたのは300mlぐらいの一人分サイズペットボトルに、そのまま飲めるキャップがついたもの。去年のオーストラリア旅行ではずいぶん飲んだけど、今回はこれが初めてだった。便利だよね。日本でも売っていればいいのに。

 干し草椅子の上でのんびり休息していると、いろいろな人が前を通る。
 白人、黒人、アボリジニ。
 家族連れが多く、子供たちはみんな風船とショウバッグを持っている。ベビーカーに5つも風船をくくりつけてあるのも見た。車椅子の人もとても多い。妊婦さんはおへその出る服を堂々と着こなして、風船みたいに膨らんだお腹もアクセサリーの一つのようだ。
 出店のゲームで賞品をゲットした人も多いらしく、両手で巨大なぬいぐるみを抱えている人を何人も見た。カナとレナにはあれだけはやらないと言っている。だって見上げるようなぬいぐるみを抱えて飛行機に乗るのはママは嫌だよ。
 私は気がつかなかったが、パパがさっき日本人も一組見かけたと言っていた。
 まだまだ人出は混雑にはほど遠い。
 遊園地のライドがイルミネーションで赤や黄色に光り出す頃、学校や仕事を終えた地元の人たちも繰り出してくるのかもしれない。

 この店はちょうどさっきの幕張メッセみたいな展示場のそばにあった。
 展示場の入り口にはコーヒーを売っている出店があった。
 その場でも飲めるようだが、豆も売っている。
 Jaques Australian Coffeeと書かれている。
 そういえば、ケアンズ土産にディンツリーのお茶などは定番だが、コーヒーはどうだろう。先日訪れたマリーバでコーヒーを生産していたはずだ。
 自分はコーヒーを飲まないので何が良いか判らず、パパにミディアム・ローストの豆を買ってきてもらった。250g、5ドルだった。



 食後はあと一つずつライドに乗って良いとパパは言った。
 カナもレナも悩む悩む。
 こういうときカナは、悩みすぎて、もう乗らなくていいとか言い出す。
 真に受けて乗らせないと、1時間以上泣きながら愚痴るのでとにかく一つ決めろと言った。

 レナはMad Carという、ぐるぐるぶつかり合うゴーカートを選んだ。マリーバのロデオ大会で乗ったのと同じだ。
 あれを覚えていて、もう一度乗りたいと言う。
 あれなら大人も楽しめるけど、乗ったことのない乗り物じゃなくてもいいの?
 またカナはパパと、レナはママと組んだ。
 シートベルトをまわしてGO。
 スピードを出してぎゅうんと回り、パパたちの後ろにどしんとぶつけてやれ。

 カナもまた、マリーバからずっと気になっていたものを選んだ。
 サーカスの飾り付けをした、迷路と障害物がセットになっているような小屋だ。
 入り口で機械仕掛けのピエロが体を振りながら笑い声を立てている。
 本当にこれでいいの?
 いい。
 問題はレナ。
 怖くて入れない。
 カナはさっさと入り口を入っていったが、切符を買ったにも関わらずレナは足がすくんで戻ってきた。
 「やっぱり嫌だ」
 嫌なのはいいが(よくないか)、これまたさっきのカナじゃないが、怖いけれど本当は行きたいのだ。
 だから無理に行かせれば大泣きするし、諦めさせれば後々まで愚痴愚痴と言う。
 難しいところ。
 説得してみることにした。
 「怖くないよ。お姉ちゃんもついているし、絶対今行かないと、後でやっぱり行きたかったって言うことになるよ」
 何度か戻ってきたが、最後には階段を上って入り口から消えた。

 ・・・。

 最初の難関はボール部屋。
 よくマクドナルドの屋外遊具などにある、プラスチックのカラフルなボールがぎっしり詰め込まれている部屋だ。
 カナはひょいひょいとクリアして次へ進んだが、レナはすっぽりはまったまま身動きがとれない。
 だから嫌だったんだとばかり大声で泣き始めた。
 カナが妹を救出に戻ってきた。
 腕をつかんでひっぱり出そうと努力する。
 一部始終は金網越しに外からも見えていた。
 だけど腰までボールの海に沈んだレナはなかなか進めない。
 助けて助けてと泣きわめく。
 仕方ないので母が救出に行くことにした。
 切符を持っていないが、ボール部屋で娘を助けたら入り口に戻ってくれば許してくれるだろう。
 じぐざぐの階段を下りるとすぐ、そのボール地獄だった。
 足を入れると体重でずぶっと沈んだ。ボールが硬いのでかなり痛い。
 泣いているレナのところまでなんとか進み、レナを部屋の出口まで押し上げる。
 そこではカナが待っていて、レナを受け取ってくれた。
 子供たちは手に手を取って先へ進む。
 ボールの海に沈んだ母は、力つきてなかなか入り口に戻れない。
 ・・・何だかとっても間抜けな格好だ。

 全て終えて、揃って笑顔で出口から出てきた娘たちはそれで満足したようだった。



 「あっ、行きすぎた」
 ぼうっとしていたら、行きに見かけたシーフード・マーケットを過ぎてしまった。
 Uターンする気にはなれず、そのまま車を走らせる。
 旅の終盤に来て、パパは相当疲れている。シーフードは諦めよう。

 と、思ったら。
 シーフード・マーケットはもう一軒あった。
 シェリダンストリートの北の外れには、魚介類専門店が1ブロックほど離れて二軒あったのだ。

 車を停めて、ママが買い物に行く。
 中は量り売り専門の店で、とにかくエビが何種類も。あとはバラマンディ、バス、サーモン、そしてマッドクラブ。
 指くらいのサイズのちっちゃな烏賊やタコも売っていた。車に戻ってパパにタコがあったと話したら、外人はタコは食べないんじゃなかったっけと驚いていた。

 買ったのは加熱済みのTiger Prawns。生のもあったけど、帰ってすぐそのまま食べられる方がいい。
 サシミ用にそう明記されて売られている魚や、太巻きのお弁当パックなどもあって、きっとケアンズ在住の日本人は困らないだろうなと思った。



 ところで到着日から何度もキャプテンクック・ハイウェイを行き来していて気になった店がひとつあった。
 ケアンズから見て、パームコーブの少し手前。クリフトンビーチへ至る枝道の近くに工事中のスーパーマーケットがあったのだ。
 最初に見かけた7月15日の時点では、建物の形はできているもののオープンはまだまだ先に見えた。
 翌16日、熱気球ツアーの帰りに見たときは、一日でずいぶん出来上がってきたなと思った。
 二日おいて19日、ミコマスケイ・クルーズのために早朝ケアンズに向かったとき、何だか今にもオープンしそうな雰囲気に見えたが、まさかその帰り道、夕方に再び通ったときに既に店が開いてお客さんが買い物をしているとは夢にも思わなかった。
 秀吉の築城みたい。
 速すぎてびっくり。

 Clifton Village Shopping Centre。
 ここはスーパーマーケットのColesと薬局、郵便局、銀行などが入っている。
 しかし中に入ってみると、実は完成しているのはColesといくつかの店だけで、まだ残り半分は工事中であることに気づく。
 日本だったら全て完成してからオープンするだろうに。こちらでは、できた端から営業を始めちゃうのだ。
 オープニングセール中のColesの横で、まだ壁や天井をドリルでがたがたやっているレベルの店舗もあった。

 昔パームコーブに泊まったときは、リゾート内の売店やビーチの売店で必需品の買い物をした他は、オプショナルツアーでケアンズに出たときに買い出しを済ませていた。
 当時はレンタカーを借りていなかったのだが、もし車があったらキュランダへの登り道の入り口、スミスフィールドのショッピングセンターで買い物をしていただろう。
 でもこのクリフトン・ヴィレッジ・ショッピングセンターができたおかげで、パームコーブに泊まる人の買い物はずいぶん便利になったのではないだろうか。

 まだオープン間もないので、中はとても綺麗だ。
 整然と商品が陳列してある。
 今更こちらでの生活必需品でもないので、お土産用のお菓子など買った。TimTamはポートダグラスのColesより品揃えがよかったので、二つセットになったパックなど購入した。
 子供たちはイチゴのゼリー。
 それから・・・。
「ベティだ」
 ベティ・スパゲッティ発見。
 頭や手足が取れて取り替えられる人形だ。
 昔、マクドナルドのハッピーセットのおまけでついてきて、それ以来子供たちのお気に入り。去年、日本でもこれのまがい物とでも言うべき人形がバンダイから発売された。セーラームーンと明日のナージャで、うちの子供たちはセーラームーンを持っている。
 でもやっぱり本物とは違うのだ。バンダイはちっとも判っていない。
 子供たちが着せ替えセットを喜ぶのは、ひとつずつ洋服が違うからで、キャラクター全て色違いで同じ服を揃えればよいというものではない。
 だからどこかで本物のベティが手に入らないかなと思っていた。
 ここでベティとゾーイの人形も購入(日本に帰ってバンダイのセーラームーンとはめかえてみたら、ちゃんと手足や服のサイズは同じで、取りかえっこして遊べた)。



 明るいうちにポートダグラスまで戻らなくてはならない。
 この間、ヴィラのテラスで夕食を食べたことがカナはよほど嬉しかったとみえて、今日も絶対にテラスで食べると言っている。
 この間は疲れたレナは寝ていて食べられなかったので、今日こそはレナと一緒に食べるんだそうだ。

 ベランダでディナーにするとき、最初から真っ暗では面白くない。
 明るかった空がだんだんと黄昏れて、やがて月が昇り星が瞬くのが良いのだ。

 レックス・ルックアウトを通過。
 今日もグライダーが翼を並べて風を待っている。
 雲一つない快晴。
 この景色とも明日でお別れ。

 今回私たちの泊まった144号室は、テラスが二つついている。
 このうちヴィラの敷地に面した広い方のテラスを使う。
 カナもレナも食器や料理を運ぶのを手伝ってくれた。
 パスタが茹で上がるまで少し時間があったので、パパは「子供たちを連れてホテル棟に行ってみれば」と言った。昨日の椰子の実パフォーマンスのように、何かイベントをやっているかもしれないというのだ。
 カナとレナは、ケアンズ・ショーでもらったヘリウム風船を、レインフォレスト・ハビタットで買ったロリキートのぬいぐるみにくくりつけて、競うように走り出した。
 ヴィラからホテルまでの道、もう目をつぶっても行かれそう。

 でも今日は残念ながら何もイベントは無かった。
 それでも二人がまたプール前の広場で追いかけっこをしていると、知らない金髪の坊やが参入してきた。
 レナは風船を取られるかと思って真剣に逃げていた。

 ヴィラに戻ると日が陰りかけていた。
 パン、サラダ、パスタ、そして茹でエビ。
 夕暮れの空は時々巣に帰るロリキートの群が横切る。
 今日が最後の夜だね。
 グラスを傾けていると、椰子の葉の合間の青い空は、浅黄色になり、茜色になり、やがて濃紫に沈んだ。
 日が暮れると、ロリキートたちの代わりに羽根を広げた大コウモリたちがゆったりと飛ぶ姿が見られる。
 今宵も満天の星。頭上に銀河が横たわっている。
 ワインも全て飲み干して、後は思い出を抱きかかえて眠るのみ。

最終日「天空の虹」へ続く・・・
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