7.ポートダグラスで過ごす
七日目 7月20日(火) |
レナの泣き声が聞こえて飛び起きた。
時計を見たら4時だった。
4歳のレナは未だに時々夜泣きする。
夜泣きなんて言うのは1歳未満の赤ちゃんがするものと思っていたが、特に興奮した日の夜と翌日の夜は彼女はよく泣く。寝ぼけて大泣き。寝静まっている時間にこれをやられると親は辛い。
彼女は誰より傍若無人なのに、実は一番神経が繊細だ。
自家中毒症もあって、興奮しすぎると翌日すぐに吐く。
リッジスのヴィラは二階建てで、一階にリビングやキッチンとシャワールーム、二階にバスルームと寝室が二つある。寝室はツーベッドルームとダブルベッドルームで、到着早々ツーベッドルームは子供たちに取られた。ここは子供部屋と言われ、鍵までかけられてしまった。
昨夜、クルーズでたっぷり遊んだレナは、帰宅前に寝付いてしまった。
そのまま起きなかったので、子供部屋になったツーベッドルームのベッドに運んだ。
寝るのが早かったから夜明け前にお腹が空いて目覚めたのかと思ったが、単なる夜泣きで、よしよしと背中を叩いてやるとまた寝付いてしまった。
心配なのでそのまま私もレナのベッドで一緒に寝た。
次にカナが起きた。
今度は5時だった。
まだ早すぎだってば。一時間前にレナに起こされた私はまだ眠い。
カナは寝ぼけたわけではなく本当に目が覚めたみたいで、隣のレナのベッドで寝ている母が起きる気配がないと知ると、一人で階下に降りていった。
階下では既にパパが起きていた。
彼も4時にレナの声で目が覚め、そのまま眠らなかったという。
カナの声が聞こえるとレナも目を覚ました。
今もうベッドにしがみついているのは私だけだ。
パパはいつものように、夜明け前の散歩に行くことにしていた。
今日はカナも行く?
行くよ。
いつも一人で気楽に出るところ、カナの準備で手間取った。
ママ、カナの着替えはどこ?とパパが階下から声を張り上げて聞く。
うー、もうちょっと寝かせてよ。子供部屋の棚の上。
パパはカナを着替えさせて、寒いのでウィンドブレーカーも着せて、さらに砂場道具のバケツも持たせる。
これで準備完了、と思ったら。
待って、レナも、レナも行く。
レナの長袖はー?
うー、昨日のビーチバッグの中かな。
だからお願いもうちょっと寝かせてよ。
ようやく子供たちの準備も全て整って、三人でドアを開けた。
「じゃ、ママ、ビーチまで行って来るね」
待て待てーっ。
寝ようと思ったのにここまで起こされては。
私も一緒に行くってば。
あと3分待って。
「来なくていいよー」と冷たく言うパパには後でパンチ。
速攻で身支度を済ませ、カメラを手に飛び出すと、もう子供たちの姿は無い。
私をおいてフォーマイルビーチまで行ってしまったのだろうか。
冷たすぎる〜と思ったら、ヴィラの敷地内にいた。
鳥を探していたという。
夜明けの道をビーチへ。
リッジスリーフリゾート・ポートダグラスはホテル棟とヴィラ棟と別々に入り口がある。私たちのヴィラはちょうどヴィラ棟の出入り口のすぐ横だった。
出るとすぐ、ポートダグラスの半島を貫くポートダグラスロードだ。
この道を渡り、ちょっと歩くとビーチへの近道がある。
細い、人一人通るのがやっとの小径。
両側は小さなレインフォレスト。
先を歩いていたカナとパパが、オレンジフッテッドスクラブフォウルを見つけた。二羽いる。
オレンジフッテッドスクラブフォウルはカナの大好きな鳥。
大きさは45センチぐらい。焦げ茶色でオレンジ色の足。
オーストラリアの北部海沿いにしか生息していない。
地熱で卵を温める珍しい鳥で、ケアンズ周辺では人家の側でもよく見かける。
見つけた二羽はしきりと足で地面を掘っていたが、カナたちが近づくとばさばさと飛んで逃げてしまった。
ビーチの手前で道は砂地になる。
ちょうど木の幹に真っ赤な朝日が当たっているのが見えた。
夜明けだ。
コーラルシーから日が昇る。
砂浜に出ると足下に長い長い影。
真冬の太陽はまだ、顔を出したばかりだ。
朝のフォーマイルビーチは意外に人気がある。
散歩している人、ジョギングしている人、サイクリングしている人、そして写真を撮っている人たち。
子供たちは早速貝を探し始めた。
昨日のミコマスケイと違って、ここで拾った貝は自分の物に出来る。
夕方のビーチに小さなカニが沢山いるように、朝の浜辺にも何か生き物の気配は無いかと息を殺してみると、いるいる、何か小さい物が沢山、砂の上で跳ねている。
何だろう。
一匹捕まえてみた。
小さい小さい1〜2ミリぐらいのエビみたいな生物だ。
エビかな、とパパに言うと、虫だろう、と返される。
波打ち際から離れた砂浜に沢山いる。じっとしゃがんでいると、廻り中で飛び跳ねている。
ふと思い立って、打ち上げられている海草を持ち上げてみた。
その下に隠れていたらしく、うわーっと大量のそれがスーパーボールのように跳ねた。
あんまり面白かったので子供たちにも教えてみた。
二人とも夢中になって、海草やら流木の小さいのやらを持ち上げてみる。
どの草や木の下にもその虫みたいなのは隠れている。
持ち上げると一斉に飛び出すので線香花火みたいだ。
朝の散歩を終えたらレインフォレスト・ハビタットへ行こう。
ここはポートダグラスの動物園で、とにかく鳥類が多い。
ケアンズトロピカルズーの目玉の一つが夜行性動物を楽しむナイトズーであるのに対し、こちらは朝の早い鳥たちとブレックファストを楽しむのがポイント(ちなみにレインフォレスト・ハビタットにもHabitat
After Dark有ります )。
去年も訪ねて、鳥と朝御飯を食べたり、コアラに触ったりした。レインフォレスト・ハビタットのコアラは抱っこはできないが、10時からと15時からそれぞれ舎に入ってなでなでしながら記念写真を撮ることができる。
あのときカナは、コアラは全然動かないからつまらないと言っていた。レナは可愛い可愛いと大喜びだった。
今回の旅行でカナが一番楽しみにしていたものに、レインボーロリキートの餌付けがある。
朝8時から11時のBreakfast with the Birdsに行くと、園内のレストランでトロピカルフルーツ満載の朝食を食べることができ、しかも運が良ければ席までカラフルなロリキートが遊びに来る。一回分がパックになったビュッフェ用ジャムを開けて待っていると、何羽も飛んできて、諍いをしながらついばんでくれたりする。
園内は、Rainforest、Wetlands、Glasslands、コアラ舎と分かれている。
Rainforest熱帯雨林には主にオウムやインコなどが、Wetlands湿原には主に水鳥たちがいる。Glasslands草原はカンガルーやワラビーだ。
レストランはシートの屋根が掛けられてあり、鳥たちの落とし物がないように配慮されている。
ビーチでゆっくりしてしまったので、かなりテーブルはうまっていた。
大人はシャンパン、子供たちはオレンジジュースを頼み、ビュッフェへ食べ物を取りに行く。
いつロリキートが来るかと、カナはもう気もそぞろだ。
ビュッフェの横の止まり木に、二羽のRed-tailed Black-Cockatoo。
冠のような羽が頭から生えている全身真っ黒の大きなオウムだ。雌は細かい黄色の斑点がある。たまにばさばさと羽を広げると、尾羽根が鮮やかな赤だった。
とりあえず食べる物とジャムを取ってくる。
やはり冬だからか、去年の5月よりフルーツの種類が寂しいような気がする。
メロン、マンゴーなどは沢山あるが、スターフルーツは見あたらないし、カスタードアップルはほんのちょっぴり。
いつも不思議に思うのだが、何故かトマトはフルーツ扱い。
でも確かにこちらのトマトは日本のものより硬くて甘い。あっさりした味で酸味がまったく無い。
やがてつがいの黒いオウムが飛んでいった後、黄色い冠をかぶった白オウム、Sulphur-crested
Cockatooが一羽と、四羽のレインボーロリキートが止まり木の横の餌台にやってきた。
早速カナを呼びに行く。
席まで飛んできてくれる保証はないから、見つけたらカナを連れていくのが良い手だろう。
既に同じことを考えた金髪の女の子が一人、ジャムを持って立っている。
カナと並んで餌台の方へジャムを差し出した。
最初はなかなか興味を示さなかったロリキートたちだが、そのうち気づいてジャムを食べだした。
苺ジャムよりマーマレードの方が人気があるようだ。
少しジャムを食べてくれたが、すぐに飛んでいってしまった。
カナはまだ欲求不満のようだ。
いくら待っても去年のようにテーブルには来てくれない。
今回も中央のテーブルではロリキートが飛んできて、ジャムを食べたり肩に飛び乗ったりしていたから、自分の席にロリキートが来てくれるかどうかは運次第のようだ。
さっきのRed-tailed Black-Cockatooが近くのロープにとまったがこちらはジャムにはあまり興味がないよう。
再び中央の止まり木にロリキートが数羽戻ってきた。
もう一度カナはジャムを手に、とんでいく。
止まり木のてっぺんにとまっているから届かない。
知らないおばさんがカナを抱っこしてくれた。それでも届かない。
どうしてもロリキートが振り向いてくれないのでついにカナも諦めた。
諦めてテーブルで大人しく食べていると、ぎゃあぎゃあと喧しい鳴き声が頭上を通過する。
またロリキートの群がレストランに戻ってきたのだ。
今度は止まり木ではなく、すぐ近くの塀の上にとまっている。これはチャンスだ。
カナとレナはめいめいジャムを手に持って、早速塀に向かった。
他の子供たちもみんな手に手にジャムを持って、塀の側に集まってくる。
やっとカナもレナも悔いが無くなるまでロリキートに餌付けができた。
朝食の後は、カンガルーたちに会いにGlasslandsに行ってみよう。
エミュー・ウォークのエリアでは今日もエミューが闊歩。
パパが、「あの外側は一般道だから、エミューだけは入園料を払わなくても見られるな」と言った。
レインフォレスト・ハビタットのカンガルーの餌は2ドル。結構たっぷりと入っている。
カンガルーエリアの入り口で、お腹の袋に赤ちゃんを入れたお母さんカンガルー発見。
カナとレナで親と子の同時に餌やり大作戦。
食べるかな?
あっ、お母さんカンガルーはカナの手から、赤ちゃんはレナの手から餌を食べたよ。
このエリアにはカンガルー、ワラビーの他に、Glay Dancer(Broga)、Purple
Swamphen、Australian White Ibisなど水辺の鳥たちがいる。
去年レナをおそったマグパイ・グースも沢山いて、パパはレナに怖くないよと手に餌を乗せて食べさせたりした。
レナも真似して手に餌を乗せてみるが、やっぱり怖い。そりゃそうだ。
キノボリカンガルーは普通のカンガルーと違って特別に檻がある。
でもいくら探しても見つからない。キノボリというくらいだから木の上かと目をさらのようにしてもまだ見つからない。
するとパパが、「キノボリカンガルーは今いないってここに書いてあるじゃないか」
えーっ。
去年もいなかったよ。
この大きな檻、まったく見かけ倒し。
クロコダイルのコーナーもある。上から見下ろすようになっている。
ここのクロコダイルは
ハートレーズと違って餌がないから全然動かない。
置物も同然。
頭のすぐ横ぐらいに、ぽとんと上からカンガルーの餌を落としてみた。
それでもぴくりともせず、お休みのよう。
レナはそれを見て、「レナが落ちたら動くかな」
やめなさい。
本当に餌になっちゃうよ。
ふと気がつくと、外人さんも日本人も結構カンガルーと並んで写真を撮っている。
ここのカンガルーは大人しいというか、のんびりしているので逃げないし、餌も気が向かないと食べないくらい。
だから寄っていって触りながら写真を撮るにはなかなか良い。
カナとレナにもカンガルーと並んでもらった。
でもこういうときに限ってカンガルーはジャンプして逃げちゃうのよね。
餌を全部あげ終わって、次はレインフォレストへ。
宙に渡された木道を歩くようになっていて、ふと下を見下ろせば、世界で三番目に大きくて、派手で凶暴なカソワリー発見。
写真を撮るのに葉っぱがじゃまだなぁと思ったら、レナがよけてくれた。
真っ青な首のカソワリーと思わず目があって、ぎろりと睨まれてしまった。
あちこちの木の上に、水の畔に、いるいるいろいろな鳥が。
去年は気づかなかったけど、このレインフォレストコーナーはじっくり見れば見るほど面白い。
泳ぐのが上手な白黒の鳥はCormorant。潜っているところはまるでペンギンみたい。
レインフォレストを抜けると、去年レナがヘビに触った場所に出た。
去年はスネークのショーをやっていたが今日はクロコダイルのようだ。
ハートレイズで抱っこさせてもらったような子ワニが塀の上に乗せられていた。
食いつかないようにこの子も口先をテープでぐるぐる巻きにされている。
ちょんちょんとつついたら、手足をばたばたさせていた。
ワライカワセミもいる。
平たい頭で結構大きい。
斜に構えた目つきがなかなか可愛い。
再び木道に乗ってさらに歩くと、カソワリーに負けないくらい派手な鳥がいた。
水辺に巣を作って、子育ての真っ最中。
ちょうど上から見下ろすようになっているので、巣の中の子供たちも丸見えだ。
足とくちばしの長い水鳥で、頭から首にかけて青くぎらぎらと光っている。
子供たちは二羽いて、小枝を集めた巣の中で、お母さん鳥の足下にいる。
何が凄いといって、この親子、縮尺を間違えているんじゃないかと思うほどでかいのだ。エミュー、カソワリーほどではないが、親は身長1メーター20センチ。なんとうちの6歳の長女より背が高い。
この鳥の名前はBlack-necked Stork。
そろそろ子供たちが出たいと言い出した。
理由は判っている。
レインフォレスト・ハビタットの入り口にある売店で、入るときにロリキートのぬいぐるみを見つけたからだ。
あれがほしくて仕方ないのだ。
パパ、お願い。
娘たちのお願いに弱いパパは、揺らすと本物そっくりに鳴くレインボーロリキートのぬいぐるみを、カナとレナそれぞれに買ってくれた。
いいけど・・・あなたたち、コアラは見なくていいの?
どうもうちの娘たちは、コアラよりレインボーロリキートらしい。
今日の午後は特に何も予定を立てていない。
このままポートダグラスの先端まで行って、アイランドポイント展望台を見てから、お昼にすることにしよう。
アイランド・ポイント・ロードの先にあるルックアウトには去年も行った。
しかも歩いて、だ。
レンタカーを返却してしまった後だったので、自力で登って行くしかなかったのだ。いやはや辛かった。
たいして距離はないのだが、何しろ急な坂道。子供たちが歩いちゃくれない。騙し騙し、騙しきれなくなると仕方ないのでおんぶして、汗をたらしながら必死で登った。
頂上に着いたとき、見下ろしたフォーマイルビーチの美しかったこと。
今回は車だから楽々だ。
本当にあっという間についてしまう。
駐車場に車をとめて、先端まで歩み寄れば、弧を描くビーチを一望。
遙か眼下に白い波が打ち寄せる。
展望台には世界の主要都市の方角を書いた円盤が取り付けてあり、カナとレナに東京はあっちだ、と指さした。
あっちって言われてもぴんとこないかな。
ロリキートのぬいぐるみと一緒に撮ってあげるから、はい、ポーズ。
ところで、ポートダグラスの観光と言えばこのルックアウトやフォーマイルビーチの他に、セントメアリーズ・バイザシー教会というのがある。
白い木造の可愛らしい教会で、日本からわざわざ結婚式を挙げに来るカップルもいるという。
これを去年、ルックアウトへ向かう道すがら見かけたような気がして、今年こそは写真を撮ろうときょろきょろ捜したもののどうしても見つからない。
ワーフストリートをアイランドポイントロードへ曲がる少し前くらい。あのポリスステーションの隣が怪しいのだが・・・その建物は教会ではなくOld
Court House(ポートダグラス博物館)だった。
変だなぁ。
思い違いかなぁ。
ちなみにこれは本当に私の思い違いで、後でパパにアンザック公園の反対側にそのナントカって教会、あったぞ、と言われてしまった。
アンザック公園の駐車場に車を置いて、お昼はマリーナミラージュの桟橋近くで海を見ながらと、ワーフストリートかマクロッサンストリートでポートダグラスの町を見ながらとどっちがいい? と聞かれる。
どっちかというと、海を見ながらの方がいいけど、ワーフストリートなら歩かなくても目の前だよ。
最初に向かったのは、サルサバー&グリル。
入り口に提示してあるメニューを見る。
エスニックか多国籍って感じ。パスタもあるけど。
パパはそういう気分じゃなくて、無難にサンドイッチかフィッシュ&チップスがつまみたいと言う。彼はこういうときあまり冒険しないのだ。
「他の店にしよう」
うーん、ちょっとこのジャスミン・スチーム・ライスが気になったのに。
結局入ったところはもう少しマクロッサンストリートに近いワーフストリート・ビストロ。店内はちょっとレトロなバーという感じだ。
グリルしたチキンとポテトと、あとサラダ。
注文してオープンエアの席に座ると、ちっちゃなお客さんがやってきた。
オージーかな? 青い目に赤いシャツのはなたれ坊やだ。よちよちと足取りもおぼつかなくやってきては、テーブルをがじがじとかじっている。
あわててママがとんできた。
午後の予定は特にない。
パパが子供たちは引き受けるからショッピングに行っていいよと言う。
ショッピングにはあまり興味はないけど、子供たちにじゃまされず一人でポートダグラスの町をぶらつけるのは最初で最後かも。
パパはお財布から20ドル札を2枚出した。
「高いものは自分のカードで買ってね」
パパは子供たちをさっさと連れ帰り、午後からはヴィラでお昼寝としゃれこみたかったようだが、見ていたらカナもレナも駐車場ではなくアンザック公園のブランコの方に駆けていってしまった。ご愁傷様。
ここで声をかけると別行動が取れなくなるので、見て見ぬ振りをして、アンザック公園の反対側へ向かってみる。
思えばアンザック公園はいつもマーケットの時にしか来ていない。
こんな風に昼下がりの静かな様子は初めてだ。
いつもフレッシュジュースを絞っているミニミニ・カーテンフィグツリーの前も広々。
右手へ進んでみると、こちらにも少し子供向けの遊具がある。
さらに進むと、等間隔に椰子の木が植えられていて、いかにも南国風な一角に出た。
椰子の木の間間には、それぞれ水着のカップルがごろごろしていて、服を着て一人で歩いている自分が浮いているなと思った。
きっとポートダグラスの最も正しい過ごし方は、子供はアンザック公園の遊具で遊ばせて、大人は水着でここでごろごろすることなんだろう。
今度はマクロッサンストリートを歩いてみよう。
今日はかなり涼しい日で、晴れているのに昼を過ぎても半袖では肌寒い。
ポートダグラスの目抜き通りマクロッサンストリートは、道の両側を土産物屋やレストランが埋め尽くしている。
もちろんケアンズのように大きいものではなく、全ての店をひやかしながら歩いても1時間程度だろう。
マリーナミラージュよりもごちゃごちゃと庶民的な感じがする。
土産物は石鹸が目に付く。
オーストラリアでは食品が安いのに対し、生活雑貨はそれほど安くない。ものによっては日本の方が安いくらいだ。
土産物用の石鹸も高いが、形や香りに趣向を凝らしていて、本物のプルメリアやハイビスカスの花みたいな石鹸や、香りの良い石鹸などいろいろ売っている。
Tシャツや帽子、写真立てなどにPort Douglasと入っているのは日本の観光地と同じ。アボリジニの工芸品や、水着屋、写真や絵画のギャラリーも多い。
子供服の専門店では、到着日にリッジスのレセプションでもらったようなお砂場遊びセットが5ドルで売られている。
Colesの入っているショッピングセンターにある本屋でついつい時間をつぶしてしまった。
詳しくてリーズナブルなこの辺りの地図がほしかったが、適当な物がない。
レンタカー屋が貸してくれた地図は買うと50ドルもするし。
ビーチへ向かって左手にレンタカー屋が見えると、すぐ先に去年食事をしたココナッツ・シーフード・レストランがあるはず。
だが、やっぱり閉まっていた。
美味しい店だったのに。もう営業しないのだろうか。
ちょっと残念だ。
結局歩き回るだけ歩き回って、買い物をしたのは最後のColesだけだった。
ここで少しお土産にする食品などを買い込む。
入って直ぐ右手に、お土産用なのか豪州産製品がまとめてある。
ユーカリの一種で天然殺菌成分を含むティーツリーの石鹸、歯磨きなど、それからカソワリーのパッケージのディンツリーティー(繊細さより力強さのある味かな)、ハーブ入りのソルト、マカダミアナッツチョコなど。
ティーツリー製品とハーブソルトを買い物カゴに入れ、TimTamで有名なARNOTT'S製の箱入りクッキーを買った。TimTamでもいいんだけど、甘すぎるし何より帰国時に割れやすいので箱入りのお菓子を捜してみた。もちろんTimTamはまた、パパが会社へのお土産に沢山買うだろう。
3時半までに戻る約束をしていたが、こういうときに限ってなかなかローカルシャトルが来ない。
ポートダグラスの町中は、Sun PalmsとCoral Reef Coachesの二社がローカルバスを走らせている。
マリーナミラージュからレインフォレスト・ハビタットまでの間をぐるぐる回っているといえば判りやすいだろう。
どちらに乗っても経路は同じだが、往復切符などを買ってしまうと買った方の社のバスしか乗れないからご注意を。
Coles前で20分も待ってしまった。待たないときは頻繁に走っているような気がするのに。
結局ヴィラには3時半を2、3分オーバーして到着した。
私達は食事抜きのツアーを使ったが、実はサービスで到着日の夕食だけはホテルで食べられることになっていた。
しかし、到着日なんて朝は早いし疲れているし、子供達は夕食時にはぐずぐず言うか寝てしまっているに違いない。こんな日に豪華なディナーなどつけてもらっても宝の持ち腐れ。
できればただでゴージャスディナーを食べるのは、もっと落ち着いてからにしてほしかった。
到着日に迎えに来てくれた、ツアーガイドのLさんにそうお願いしたところ、その日のディナーはキャンセルしてくれて、滞在中自由な日に変更してよいと言ってくれた。
そこで、ポートダグラスでのんびりできる今日、リッジスのレストラン「ムンディーズ」に予約を入れておいた。
リッジスリーフリゾート・ポートダグラスは、ホテルのレセプションから見て右手にインターネットカフェとシャークバーというバーがあり、左手に魚の泳ぐ小さな蓮の池とムンディーズというレストランがある。まっすぐ進めばラグーンプールだ。
夕方五時から、ムンディーズの蓮池で魚のフィーディングが行われると張り紙があった。
だけどもたもたしているうちに部屋を出る時間が五時になってしまった。
ヴィラからホテル棟まで徒歩五分ほどかかる。
ムンディーズに着いたときには、残念ながら五時を五分ほど回ってしまっていた。
魚に餌をやっている気配はない。
レストランの入り口で聞いてみると、やっぱりもう餌付けは終わってしまったらしい。
レストランがオープンするのは六時。
あと五十五分、この中途半端な時間をどうすればいい。
ほかにもレストランのオープンを待っている子連れがちらほらいて、池の周りで遊んでいるからにぎやかだ。
誰かが池にボールを落とした。
通りがかりの男性が、子供の砂場道具からスコップを借りて手を伸ばして掬い上げた。
グッド・ジョブ。
さて、少しプールの方に歩いてみると、毎晩椰子の木の下で、パフォーマンスが行われている。
この日はエプロンをした男性がナイフを片手に椰子の実を使ってショーのようなものを行っていた。
「何でテキヤがこんなところに?」
「テキヤじゃなくて、ホテルのサービスのひとつだと思うよ」とパパ。
椰子の実を放り投げてはキャッチし、スパッと削ってストローを挿し、椰子の実ジュースを飲ませてくれたり、さらに内側の白い部分を削って食べさせてくれたり。
どうぞと渡されてジュースを飲んでみると、意外に酸味があって薄いヨーグルトジュースみたいな感じだ。
果肉は甘い。もっとしゃきしゃきしているかと思ったら、ぐにゃりとしていた。
珍しもの好きのレナが最初に食べて、それから恐る恐るカナも口にしていた。
カナとレナが芝生の上で追いかけっこをして遊んでいると、ほかにもお客さんがやってきた。
日本にいてもカナとレナが仲良く追いかけっこなどしていると、知らない子供が一緒に遊ぼうと参入してくることはよくある。
今回、二人と一緒に遊びだしたのは、金茶の髪で見るからにオージーボーイといった感じのJくん、五歳。妹は金髪で三歳のAちゃん。二人ともひとなつこい。
さらにもう一人、背の高いMくんを加えて五人で遊び始めた。
木に登ろうとしたり、蓮の池の魚を探したり。
私がデジカメを出したら、Jくんはそれがいたく気に入ったらしく、みんなの写真をばしばしとりまくっていた。
カメラはファインダーをのぞかないといけないと思っているらしく、何度教えても液晶を見ないでいつも顔をくっつけて撮っていた。
六時になったのでレストランへ移動。
JくんとAちゃんの親はバーで飲んでいたのでここでお別れ。バイバイをした。
ムンディーズは落ち着いた感じのレストランだが、リッジスの客層にファミリーが多いため、早い時間は子連れ客がたくさん入っている。
席はオープンエアなので、昼間も涼しかった今日は、日が暮れて半そではきつかった。子供達が寒い寒いと言い出した。
走り回っている間は気にならなかったようだが、おとなしく座席に座るように言われるととたんに寒さを感じたらしい。
レストランではとにかく大人しくしていてほしい。
ヴィラまで往復10分ぐらいかかるが、ママが上着と靴下を取ってこよう。
たそがれの空は深い紫色で、低く鎌のように細い月。
ときおり大こうもりの黒いシルエットが頭上を横切る。
もうじき星も出るだろう。
走って往復したが、その間子供達が騒がないように、パパは用意しておいたおもちゃを出していた。
おしゃれキャットのマリーちゃんの小さなぬいぐるみ。
ひとつだと喧嘩になるから必ず二つ。
持って来た防寒着を着せたりしていたら料理もそろった。
大人用メインディッシュは、チキンかバラマンディかベジタリアン。子供用はハンバーガーやパイナップルのせハンバーグ、カレーなどから選ぶ。
パパは見慣れないバラマンディは素通りして、無難にチキン。
「ケアンズにきたらバラマンディでしょ」と言うのは私。
前菜には私は本日のスープを選んだが、パパはサラダ。
運ばれてきたスープはパパの苦手な香菜が効いていて、私は満足。
同様にサラダは私の苦手なチーズがどっさりで、パパも満足。
バラマンディはマッシュポテトの上に大きな切り身が乗っていた。
あまりに量が多くて、どうしても食べ切れなかった。
これをぺろりと食べちゃうから、オージーはみんなあんなに体格がよいのだろう。
ワインの残りは部屋に持ち帰ることにした。
料理代はツアーに含まれるから無料でも、席料とワイン代だけでかなりの出費。
やっぱり我が家は自炊で十分と改めて思うディナーだった。
まあ、滞在中、一度くらいはこうして外食するのも楽しいけれどね。
八日目「ケアンズ・ショー・ディ」へ続く・・・